時代は1983年。冷戦のデタント(緊張緩和)が進む一方、未だ米ソの覇権争いは決着していなかった。当時のアメリカ大統領はロナルド・レーガンは「強いアメリカ」政策を掲げ、ソ連に勝つため高金利政策と大幅な防衛費拡大政策を行っていた。
一方ソ連は核開発を推し進め、アメリカとの緊張状態は続くものの、国内は困窮しつつあり、GDPを日本に抜かれるなど社会主義経済の行き詰まりを見せ始めていた。
冷戦は「どちらかが核を使えば撃ち返され両国とも滅ぶ」というMAD(相互確証破壊)によって均衡が保たれていた。しかし当時ソ連はと核開発・軍備拡張を一向に辞めず、アメリカを脅かし続けていた。レーガン大統領はそれに対し
「飛んでくる核ミサイルは全て撃ち落として、こっちは強力な兵器を開発したらいいんじゃん。」と考えた。
「スターウォーズ計画(SDI計画)」とはこうした構想によって生まれた計画であり、具体的に言うと宇宙空間に軍事衛生を配備し、それと地上の迎撃システムを連動させて大陸間弾道ミサイルを迎撃・無力化するための兵器開発計画である。以下はスターウォーズ計画によって研究された兵器の紹介だ。
●兵器①HOE(傘ミサイル実験)
このミサイルは飛んでくる大陸間弾道ミサイルを破壊するために研究された迎撃ミサイルで、ロッキード社が開発した。使用方法は地上の基地から発射させ、宇宙空間で迎撃対象の核ミサイルを破壊するというもの。接触する際にミサイル先端に収納された直径4mの金属網が傘のように開き、迎撃確率を上げるのがウリ。1983年から1984年にかけて4回実験が行われ、最初の三回はセンサーや誘導装置に問題があったために失敗したが1984年6月10日に初めて実験に成功した。
しかしこの最後の実験は傘ミサイルが命中しやすいような仕掛けが標的にしてあり、性能が疑問視され実用化されることはなかった。しかしこの技術は現在のTHAADミサイルなどの開発に役立てられた。
THAADミサイル ↓音が流れます
●兵器②レーザー・ビーム兵器


引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Strategic_Defense_Initiative
引用:https://www.popularmechanics.com/military/weapons/g489/space-weapon-concepts-that-never-made-it/?slide=5
他にもSDI計画で研究されたのがレーザー・ビーム兵器である。レーザーは当初X線レーザーが使用されていたが、その動力が原子爆弾という理由で運用が難しく、また計器が壊れまくったという理由で開発が断念された。その後、空軍と海軍の「シーライト計画」によって化学レーザー兵器「MIRACL(ミラクル)」の開発が研究された。そして1984に全システムが完成し、1985年にはミサイル撃墜実験にも成功した。
後に低出力のMIRACLのレーザーでも人工衛星くらいは破壊できることがわかり、対衛星用の低出力レーザーの研究が進んだ。現代ではその技術が活用され対ドローンや小型ボートのための兵器としてアメリカ軍の揚陸艦などに備え付けられている。
●兵器③レールガン



引用:https://www.digitaltrends.com/cool-tech/weaponized-satellites-and-the-cold-war-in-space/
引用:https://galnet.fandom.com/wiki/Particle_beam_weapon
引用:https://www.popularmechanics.com/military/weapons/g489/space-weapon-concepts-that-never-made-it/?slide=8
火薬を用いず磁力によって撃ち出すレールガンは、原理自体は古くから知られており第一次大戦、第二次大戦時にも日本やドイツなど各国で兵器化への研究が行われていた。しかし原理が分かっても発射するだけの膨大な電力を生み出すことができないという理由から実用化には至らなかった。しかしこのスターウォーズ計画によってアメリカは多額の資金をつぎ込み、実用化への研究を大きく前進させた。
宇宙ではソーラーパネルを使い電力の供給が可能であるということと、空気抵抗が全く無い為、運動エネルギーが保存され高威力で発射できるという観点から、レーザーと並んで有力なSDI計画の開発対象だった。しかし宇宙にレールガン兵器を作るためには多数のパーツの打ち上げと組み立て作業を要するため非常にコストと時間がかかり、運用するには2025年までかかる見通しになったため実用化はされなかった。
現在アメリカでは、レールガンの試作機を完成させ、最新鋭の高速輸送艦に備え付けたり、海上での実証試験を行っている。
●兵器④ブリリアントペブルズ
引用:https://www.spacelegalissues.com/brilliant-pebbles/ この「ブリリアントペブルズ」はスターウォーズ計画の弾道ミサイル迎撃兵器の中で実現の可能性が最も高く、有望であるとみられていた宇宙迎撃兵器である。
ブリリアントペブルズは簡単に言うと「小型自動ミサイル撃墜兵器」である。地上から弾道ミサイルが発射されると、信号を受け取ってミサイルを探知。おとりか本物かを見分け、本物だった場合ブリリアントペブルズがパカッと2つに開き、中からミサイルを発射して迎撃する。当初、ソ連の上空の宇宙空間に4400個配備する予定だったが、先にソ連が崩壊したため実用化にはならなかった。
●スターウォーズ計画の評価
スターウォーズ計画は同時アメリカ国内でも多くの批判意見が寄せられ、更にソ連との緊張も高まった。しかし当時のソ連は社会主義経済の限界点に達しており、膨大な開発費と研究者を有するアメリカに対抗する体力が無かった。
スターウォーズ計画は同時アメリカ国内でも多くの批判意見が寄せられ、更にソ連との緊張も高まった。しかし当時のソ連は社会主義経済の限界点に達しており、膨大な開発費と研究者を有するアメリカに対抗する体力が無かった。
それによってソ連に中距離核戦力全廃条約に調印させ軍拡政策を止めさせるという成果を挙げた。従ってスターウォーズ計画が最終的に冷戦を早く終わらせ、それに続くソ連崩壊をもたらしたという見方は少なくない。
一方誇大宣伝や不正による「やらせ」も発見され、批判的意見多くもある。さらにレーガン大統領のスターウォーズ計画のような様々な政策はアメリカに政府債務と貿易赤字の「双子の赤字」を引き起こした。
しかし現代にも継承される技術の獲得や、はったりでも冷戦を終わらせたのだから「成功」した良い計画だったと言えるだろう。
ちなみに私の好きなレイア姫がジャバザハットを倒した映画「スターウォーズ エピソード6」もスターウォーズ計画の始まった1983年だ。
興業収入はシリーズ最低だったが。
おわり
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