誰しも自分の過去に後悔を募らせ、その呵責に苦しめられる。

「あの時ああすれば良かった」とか「あの時に戻りたい」などと過去に縛られる。

しかしその過去の自分は、その時のベストを尽くしたハズなのだ。

結果的に悪かったとしても、自分が考え、行動し、判断してきたことには変わらない。

なのでその過去の自分を責めることは無駄であるし、振り返るべきではない。

そんなことを伝えるべく私のある思い出を語る。


ーあの時 私は高校生だったー

(回想)

小中学校の経験で人間不信に陥り、その上偏差値30代の高校に入学したので劣等感と「自分だけは周りの奴らと違う」という根拠のない自信を持ちながら学校生活を送っていた。

1年生、協調性は全く無く腫れ物扱いされる。

2年生、ヤベー奴という噂が出回りanothr並みにいない者を扱いされる。

そして3年生、人生で制服デートができるのは今年で最後と気づく

そう気が付いたのは2chで「制服デートしたことない奴wwwww」みたいなスレを見たのがきっかけだった。

それまでは「彼女が居ない」のではなく「彼女を作らない」と自分に言い聞かせることによって心のバランスを保っていたので

自分が本気を出せば彼女ができると本気で信じていた。

つまり「恋愛は実質無敗だ!」と思っていたのだ。

とは言っても同じクラスに好みの子はいなかった。いや、"すっぱい葡萄"の理論で周りの女子を可愛くないと自己暗示をかけていたのかもしれないが、とにかく付き合いたいと思う女の子は一人もいなかった。  



あの日までは。



保健室の前をたまたま通りすぎたとき、世界一の美少女を見てしまった

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華奢な細い身体、端正な顔だち、透き通るような白い肌。

私は確信した。この子と出会うために生きていたんだと

灰色の人生に白い光が差し込んだ瞬間である。

会話を重ねなくてもすぐに分かった。彼女の素性が。


私と同様この毎日に嫌気が指し保健室でさぼっていたのだろう?

私と同様”集団”や”上辺だけの関係”果ては”この世界システム”にも疑問や矛盾を感じつつも毎日を過ごしているのだろう?

私には分かる。目を見れば分かる。だからこそ私には勝機がある。



そう信じていた。

そして、


「フッ・・・最初で最後の恋愛物語、始めますか。」


と独り言を呟き、私の”終わりの青春”は始まった。



”恋愛において最も大事なことは情報である” 逆境男 Gyakkyou Otoko(1919-1945)


そう信じていた私は彼女に近づくため早速行動を開始した。

しかしまず名前が分からない。

3年間一緒の高校に通っていたのに、何故かその日まで全く見たことも無かった。

だが幸いなことに彼女は私と同学年であった。(制服につけるバッジで分かる)

なので、

休み時間に教室を全て確認することでクラスを割り出した。

そして更に幸いなことに、D組には私の数少ない友達、沼田(仮名)という男がいた。

なので沼田に彼女について根掘り葉掘り質問し、こんな会話をした。



私「沼田!あの女の子何て名前だ?」
 
沼田「逆境か、久しぶりだな。あの子は鬼頭さん(仮名)だ。クラスではきーちゃんと呼ばれている。」

私「kwsk」

沼田「きーちゃんは3日に一回くらいしか学校に来ない」

私(きっと特殊な事情があるのだろうな・・・)

沼田「きーちゃんはよく保健室で授業をさぼっている」

私(俺も明日から保健室に行こう)


沼田「きーちゃんは中学の頃ビッチだったらしい


私(・・・。)

沼田「俺が知っているのはこれくらいだ。」

私「ありがとう。助かった。」


概ねこんな会話だった。

そして付き合っても無いのにこんな葛藤をしてしまう


あんな可愛い子がビッチだったと?そんな訳がない。

いや、・・・可愛いからこそビッチというのがあり得るのか?

くっ・・・悔しい。もっと早く出会っていればきーちゃんを救うことができたと言うのに。

きーちゃんが・・・元ビッチでも愛せるのか・・・?

・・・。

・・・・・・。

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...最初の男になれなくても最後の男になればいいだけの話じゃないか!!

(というかまだそう決まったわけでは無い。)


私はそうやって思いを断ち切り、鬼頭さんと接点を持つ方法を毎晩考えた。

しかしどう考えても知り合う手段が無い。

友達の紹介として私を紹介する人はいないし、そもそも友達もいない。


そうか、人的ネットワーク、交流とは気になるパートナーと効率的に接点を持てるというメリットがあったのか...。こんなことなら高1から友達100人作れば良かった...。



しかし悩むだけでは何も進展しない。行動しなければ何も起こらない。

考えれられる可能性は・・・


ナンパをするしかない。 という発想に至った。


最初から他人同士なのだ。学校が同じだけでクラスも部活も性別も何もかも違う。

だから「やあ!こんにちは!」と言ってナンパするしかない。そして友達になるか告白するしかない。

告白するのは唐突すぎる。友達になろうと言って連絡先を交換すれば接点を持てる。

そして「友達になろう」と言われて「駄目です」と答える人はいないだろう。

完璧な発想だと思っていた。


私はそれまで頑なに使うことを辞めていたラインをインストールし、プロフィール写真を部屋に飾ってあるカッコいい1/100サザビーver.ka(ver.kaの意味は知らない)の画像にし、生まれて初めてワックスを頭につけて学校に向かった。

そして事前にリサーチした情報で、水曜日は鬼頭さんが登校する可能性が高いということを知っていたため校門付近で音楽を聴きながら彼女が来るのを待った。

しかしその日鬼頭さんは来なかった。

どうやら休みだったらしい。

次の日校門で待ち伏せするのはマズイと気づき、下校中に偶然を装って話しかける作戦を考えた。

「あれ?同学年だよね?君も帰宅部なのか?ハハッ奇遇だね!良かったら飯おごるよ」

といったところか。そして「友達になろう」と言われて「駄目です」と答える人はいないだろう。

こちらも完璧な発想だと思った。

そして事前にリサーチした情報で、鬼頭さんはサンリオが好きということを知ったのでラインのプロフィール画像をサザビーからケロケロけろっぴの画像にし、授業終わりに校門が見える離れた位置で自転車に乗りながら張り込んだ。

しかしその日も鬼頭さんは来なかった。

その日は学校には登校していたそうなので、恐らく裏門の方から帰ったようだった。


次の日校門が見える離れた位置でも待ち伏せするのはマズイと気づき、その上鬼頭さんが何曜日に来るのかもどこにいるのかも分からないポケモン金銀のスイクンみたいな存在だったため、100%確実にエンカウントするため教室前で張り込んだ。

そして授業終わり一定の距離を保ち後ろをついて行きながら、門を出たところで話かけるという完璧な作戦(?)を思いついた。

そして事前にリサーチした情報で、鬼頭さんは裏門から帰ると知ったので裏門付近の飲食店、遊び場などを調べた。

もちろん2chで教わった通りこの日も気合を入れてワックスで髪をしっかりセットした。


そして、鬼頭さんは来た。




彼女は教室から階段へ、階段からロッカーへとスタスタと移動していく。

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※この前と違って髪を下ろしていた。

その姿を見ただけで超興奮した上、

授業が終わって速攻教室を出て帰るところに共感を持ち、

やはり気が合う・・・!とも思っていた。


数十歩離れた距離で鬼頭さんを追いかけ、

ナンパが上手くいくように脳内で話しかける言葉と帰ってくる返答を何百パターンも想定した。

そしてかなりの緊張も感じた。


(女子に話しかける?この自分が?できるのか?いややるしかない!

やらない後悔よりもやる後悔だ。行け!俺!!)


そして裏門に近づいた時、人生最高潮の緊張を感じながら私は彼女に話しかけた。


「あ、あの」


鬼頭さんはびっくりした様子でこっちに振り向いた。


友達になってください!


と言おうとしたが緊張で声が全く出なかった。

口は動くのに発声ができないという異常事態。

いっこく堂の声が遅れて聞こえてくる芸のように口をパクパクさせながら、声が全くでなかった。


お互い向かい合いながらも自分だけが金魚のように口をパクパクさせ、その状況が10秒くらい続いた。


そして私は無心になり、全く言うつもりでは無かったが

「好きです」

と言ってしまった。

頭が真っ白になった私は、心の声が正直に出てしまったのだ。

すると鬼頭さんは全く驚いた様子も無く

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「私のこと知ってるの?」
と言った。

そしてこの想定外の返答に私はパニックに陥った。

(この言葉の意味はどういう意味だ??好きですと言ったら「はい」「ごめんさなさい」二択じゃないのか?この「私のこと知ってるの?」とは言葉通り”私のこと知ってるの?”の意味なのか”私の過去のことも知らないのに?”なのか”お前誰だよ”の意味なのかどれか分からない。どの質問を想定した答えを言えばいいのか、何がベストな答えなのか分からない。ただひとつだけ言えることは、この次の回答によって私の印象、この先の未来は大きく変わるということだ。間違えれば死、最善の答えを引けばハッピーな未来。絶対に失敗することができない。しかし何といえばいいのか分からない。こうしているうちにどんどん時間が・・・くそっ・・・鬼頭さんの目でかいな・・・吸い込まれていきそうだ・・・ああ・・・時間が・・・)(口パクパクさせながら10秒経過)





そして





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「うん!クラスはD組でよく保健室にいるよね!あと中学時代はモテたんだって!?すごいよね!」
と言った

思い返すのも恥ずかしい。

すると彼女は

「すっごいリサーチしたんだね」

と苦笑しながらも全く動揺する様子なく返答した。


今思えば目の前を通過する虫程度にしか思われていなかったのだと思う。


しかし私はまだ諦めておらず愚かにも

「ラインを交換してほしい」

と言うと

なんとあっさり交換してもらった。

そしてその後は言葉を数回交わし、裏門から一緒に帰ろうとしたところ、


「私、友達待ってるから」と言われた。


そう言われてしまってはどうすることもできないので、一緒に帰宅することを諦めその日は帰った。

連絡先を交換した私は、接点を持てただけで満足だった。


・・・厳密に言うと帰るふりをして鬼頭さんの友達がどんなのか知りたいと思い、離れた場所でスマホを操作する彼女を見ていた。

すると友達らしき女子が二人来て何かを話している様子だった。

その時鬼頭さんは何故か泣いているようにも見えた

そして私は不思議に思いながらも今度こそ本当に家に帰った。

そして早速ラインを開き

「今日は学校お疲れ~( ^^ )みたいなメッセージを送った。



そして案の定、そのラインは1日たっても2日たっても3日たっても帰って来なかった。(ちなみにその間、大丈夫?みたいなメッセージも送った)



そして4日目の学校の日、偶然鬼頭に廊下で会ったので「うーっす」みたいなことを言ったら軽い会釈をされた。


そしてその日の夕方に「ごめん寝てた 😅」みたいなラインが来て

(寝てたのか、良かった)と本気で思いラインを速攻返した矢先、



鬼頭さんのラインの"ひとこと"が


怖い

になっていた。







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この時にやっと自分の全ての勘違いを悟り、迷惑をかけていることにも気付いて反省し、諦めがついた。

悲しみは無かった。

ただ自分の愚かさと未熟さを呪った。


ちなみに鬼頭さんからのラインは一週間後にヒヨコみたいなスタンプが帰って来た。


その時の私は彼女が私に恐怖を感じて距離をとったと思っていたのだが、今思うと最短で私を諦めさせるための行動だったのだと思う

そして教室に入るとそれまで以上に冷たい視線を多く感じるようになったが、私は結果的に自分の行動に満足していた。

なぜなら短い時間ではあったが実際に好きになった人と話すことができたし、彼女の「いまはまで告白された人数」に一票を入れることができたからだ。


悔いは無い。

何が正解だったか、どうすれば良かったのかは分からないが、その時の自分は間違いなくベストを尽くしたのだから。


必死に行動したのだから。


だから過去に執着せず私は生きる。

あと鬼頭さん、すいませんでした。




”後ろを振り返りながら走ると必ずこける” 逆境男 Gyakkyou Otoko(1919-1945)




おわり






更にその後の話だが、鬼頭さんが保健室に行っていたのは、保健室にセフレらしき男がいてイチャイチャするからという理由を沼田から聞いたとき、私は枕に顔を押し当て何時間も泣いた。そしてもう恋なんてしないと心に決めた。

感傷に浸りたくて槇原敬之の歌を聴いたら、全く検討違いの歌で二重に泣いた。